サーフボードの性質を決める要素の1つに、『ボトムの形状』があります。
ボトムの形状には様々な種類があり、特に知られているのが『コンケーブ』と呼ばれるものです。
コンケーブとは、ボトムにあるくぼみのことで、サーフボードの滑走面に水流を作り出します。
その水流の進む方向を意図的にコントロールすることで、サーフボードに新たな特徴を与えることが可能になるのです。
気をつけるべきなのは、全ての波に対応できる万能のコンケーブが存在しないと言うことです。
サーフボードの売り文句だけを見ていると、『コンケーブは利点しかない』ように錯覚してしまいますが、そうではありません。
サーフボードのコンケーブは、『諸刃の剣』です。
波によってコンケーブが有利に働くこともあれば、その逆にパフォーマンスを下げてしまうこともあります。
特に強いコンケーブが入っているサーフボードは、慎重に選ぶ必要があるのです。
今回の記事は、『サーフボードのボトムコンケーブの種類と特徴』についてです。
サーフボードにコンケーブを作る目的とは
コンケーブの基本的な意図は、『水流を作ること』です。
コンケーブで水流を作り出すことで、サーフボードに付加的なプラス要素を加えることができます(波によってはマイナスになり得る)。
コンケーブがあるとどんな利点があるの?
形状により違いますが、コンケーブのあるサーフボードの特徴を簡単に要約すると、以下のようになります。
サーフボードにコンケーブがあることで得られる利点
- スピードが出る
- スピードを制御できる
- テールに多くの揚力が発生する
- ターンのきっかけを作る
- 操作性の向上
- レールの切り返しを助ける
- 波に対しての食いつきが良くなる
- 機敏に反応する
- テールのデザインを薄くできる
これらの利点は、『コンケーブを生かせる波のコンディション』が必要不可欠になります。
また、コンケーブの種類によって、得られる利点が違います。最初の2つの利点が矛盾しているのはそのためです。
コンケーブは必ずあったほうがいい?
波のコンディションによっては、『コンケーブがないサーフボード(フラットボトム)』の方がいい場合もあることを、頭の片隅に入れておきましょう。
シングルコンケーブ(Single Concave)の特徴【利点と欠点】
シングルコンケーブの最大の特徴は、『速さが得られること』です。
シングルコンケーブは、直進性が高く、テール部分に強い揚力を発生させます。スピードが上がりやすいですが、サーフボードのコントロールは若干難しくなります。
シングルコンケーブに必要な波質は?
大きいシングルコンケーブのサーフボードは、クリーンで力のある波が必要です。
オールラウンダーのサーフボードを探している場合は、避けるべきボトム形状だと言えます。
利点
- スピードが出る
- 揚力が発生しやすい
- 直進性が高い
- スピードが上がる
- 揚力を得られる
欠点
- 若干動かしにくい
- 波のコンディションの影響を受けやすい
ダブルコンケーブ、シングルからダブルコンケーブ(Single to Double Concave)の特徴【利点と欠点】
シングルからダブルのコンケーブは、『シングルコンケーブの欠点』を補うことができます。
どの欠点を補えるの?
補うことが出来る欠点は、『シングルコンケーブの操作性』です。
シングルからダブルコンケーブの場合、1つにまとめられた水流がテールにかけて、2つに分かれていきます。
テールにかけて2つに分かれる水流があることで、『ターンをするきっかけ』を与えてくれるのです。
その他に利点はないの?
次に挙げられる大きな利点は、『小さい波でも揚力を得やすい』ことです。
揚力が発生しやすい理由は、『水の流れ方』にあります。
シングルからダブルの場合、大きな入り口(シングル)から小さな出口(ダブル)に向かって水が流れていきます。
水道ホースで考えてみると、わかりやすいはずです。太いホースから細いホースに水を流すと、水流の勢いが増します。
勢いを得た水流が、『揚力を大きく発生させる力』になります。
利点
- 小波にも有利に働く
- 操作性の向上
- 揚力が発生しやすい
- スピードが上がる
欠点
- 波のコンディションで性能が左右される
- 波のサイズが上がりすぎるとコントロール性能が低下する
ビーボトム(Vee bottom)の特徴【利点と欠点】
ビーボトムは、『レールtoレール』がしやすい形状です。
ビーボトムのサーフボードの場合、波にパワーとサイズが必要不可欠になります。
その理由は、ビーボトムは『スピードを制御する』性質があるからです。裏を返せば、波にサイズがないとスピードが出にくいとも言えます。
どうしてスピードが出にくくなるの?
ビーボトムだとスピードが出にくい理由は、ほかのコンケーブに比べて『揚力が発生しにくいから』です。
ビーボトムでも波にサイズがあれば、自然に発生する揚力だけで十分なパワーとスピードを得られます。ビーボトムのサーフボードを選ぶ場合は、どのような波で乗るのか明確にしておくことが重要です。
こちらの動画内のサーフボードは、シングルコンケーブからビーボトムのデザインです。
利点
- レールの切り返しが早くなる
- スピードを制御してくれる
シングルコンケーブからビーボトムの場合の注意点
シングルからビーボトムの場合、シングルコンケーブの深さに注意するべきです。場合によっては、お互いの利点を打ち消しあってしまう場合があります。
また、乗り手のスタンス幅によってサーフボードの性質が大きく変わる可能性があります。
どうしてスタンス幅が重要なの?
その理由は、スタンス幅によって後ろ足と前足の置き位置が、大きく変わるからです。
後ろ足の位置がシングルコンケーブ寄りにあるか、ビーボトム寄りにあるかで、サーフボードの反応が全く違います。
このようなサーフボードを購入する際は、自分の身長やスタンス幅にあったサーフボードを選ぶことが大事です。
欠点
- 波が小さいとスピードが上がりにくい
- 波にサイズとパワーが必要
- サーフボードにスピードがないと安定性が減る
- 小波には向かない
チャンネルボトム(Chanel Bottom)の特徴【利点と欠点】
ダブルコンケーブを更に繊細にしたのが、『チャンネルボトム』です。
チャンネルボトムは、波の面に対して非常にセンシティブでダイレクトな反応を得ることができます。波のコンディションが良ければ、テールにかけて出来る水流の数を増やせるからです。
簡単に説明すると?
車で例えるなら、サスペンションをノーマルからレーシング用の硬めのものに変えたようなイメージです。
『波面の状況が、サーファーにダイレクトに伝わりターンもしやすいが、振動が大きくなる』
と行った具合です。
チャンネルの入ったサーフボードは、まさに『諸刃の剣』です。波のコンディションが良く、面ツルだと強烈なパフォーマンスを発揮します。
ただし、波面が整っていないと、サーフボードが暴れ出します。
そのような状況で、チャンネルの入ったサーフボードを扱うのは技術と脚力が必要です。
自分自身も、チャンネルの入ったシングルフィンのサーフボードを所有していたことがありました(下写真)。
結局、コンディションが悪い時に乗りこなせなかったので、チャンネルボトムのサーフボードを手放した思い出があります。
波が良くないと、チャンネルボトムがプラスにならない?
チャンネルに対してスムーズな水流が発生できない波のコンディションだと、乗りこなすのが難しくなります。
感覚としては、面の荒いオーバーヘッドの波をツインフィンで乗っているようなイメージです。波のサイズが頭以上になり面が風で乱れている時に、サーフボードのばたつきを特に感じました。
スピードが出すぎて、わずかな動きに対しても反応しすぎてしまうため、コントロールが難しくなるのです。
技術のあるエキスパートであれば、欠点を利点に変えることが出来るはずです。チャンネルの入っているサーフボードであれば、フィン選びが特に重要だと思います。
下の動画は、メイソン・ホーが自身の持つチャンネルボトムのサーフボードを説明しているものです(チャンネルボトムの説明は5:22からです)。
利点
- スピードが出る
- 全体的に反応が良くなる
- テールを踏んだ時の反応が良い
- 食いつきが良い
欠点
- 波のコンディションに極端に左右される
- スピードが制御しにくい
- 波の面が悪いと性能が落ちる
まとめ
とにかく大事なのは、コンケーブの種類の違いによる特徴を理解することです。
そうすることで、波に対して『コンケーブが有利に働いていない時』も、冷静に対応することができるようになるからです。
サーフボードの性質は、いろいろな要素が集まって成り立っています。
コンケーブも、それを担う大切な要素の1つです。
また、フィンとコンケーブの組み合わせも重要です。いろいろな組み合わせを試しているうちに、必ずベストなセッティングを見つけることができるようになるはずです。
自分の乗りたい波をイメージしながら、サーフボードシェイプとコンケーブの組み合わせを考えてみましょう。
いつの日か、自分にとって最高の組み合わせを、見つけることができるはずです。