今回は、『サーフボードリペアのやり方』を紹介します。必要な道具や、補修中の注意点などをまとめました。
サーフィンを始めたら誰もが経験するのが、『サーフボードの破損』です。
他人のサーフボードがぶつかってしまったり、テトラポッドや岩に擦り付けてしまうなど様々な破損要因があります。
サーフボードは、破損したらすぐにリペアするのが基本中の基本です。
そのままにしておくとダメなの?
破損状態が悪いと、フォームブランクス(サーフボードの芯材)がむき出しになってしまうことがあります。そうなると、サーフボードの内部に水が侵入してしまい状況を更に悪化させます。
フォームブランクスの種類によっては水をほとんど吸わないものもありますが、どちらにしても水が侵入するのを早急に阻止する必要があります。
サーフボードのリペアは誰にでもできる
見た目を重視しないのであれば、サーフボードの補修は誰にでもできます。
必要な道具さえ揃えてしまえば、30分ほどで大抵のリペアは完了します。
どの作業が一番難しい?
一番難しいのは見た目を完璧に仕上げることです。
レジンにカラー、特殊なグラッシング(塗装)がされているサーフボードはリペアが難しくなります。サーフボードの各デザインに合わせてレジンに色をつけ、補修して行くのには経験が不可欠です。
しかし、補修したいサーフボードが白ければ、初心者でも比較的簡単に目立たないリペアができます(ソーラーレジンは基本的に透明ですが、エポキシは黄ばみがかっているので注意が必要です)。
初めてのリペアなんだけど・・・
大事なのは、恐れずにリペアに挑戦して見ることだと思います。
何回も補修を繰り返すうちに、プロのように仕上げれるようになるはずです。
途中で無理だと感じたら、サーフボードのリペア屋さんにお願いしましょう。サーフボードのリペア屋さんを探している方は、こちらの記事が参考になります。
リペアに入る前に、サーフボードの素材と構造に関して理解を深めたい方は、こちらの過去記事を参考にしてください。
サーフボードリペアに必要な素材と道具一覧
サーフボードのリペアに必要な道具一覧は以下の通りです。それぞれ後で詳しく説明します。
- UVレジン(あるいは通常のレジン)
- ガラスクロス
- サンダー(もしあれば)
- 紙やすり(耐水サンドペーパーがおすすめ)
- ヘラ(ゴムベラが望ましい)
- はさみ
- UVライト(あるいは日光)
初心者におすすめなのは『UVレジン』
レジンとは、サーフボードの仕上げに使われる『樹脂』のことです。
初心者の補修には『UVレジン』がおすすめです(ソーラーレジンとも呼ばれる)。『UVレジン』とは、紫外線に反応して硬化が始まるレジンのことです。
どんな利点があるの?
利点は、太陽の光やUVライトを当てるまでは硬化しないことです。
作業を焦る必要がないので失敗が少なく、リペア作業に集中しやすくなります。
またソーラーレジンの種類によっては、適度なジェル状になっており補修がしやすいのが特徴です。
普通のレジンでは直せないの?
一方、通常のレジンで修理するのには技術が必要です。作業中にもレジンの硬化が始まってしまうため、手早く作業しなければならないからです。
初心者の方はUVレジンでリペアに挑戦して見ることをお勧めします。
今回、使用したのはこちらのUVレジンになります。こちらのレジンは適度なジェル状なので、レール部分の補修に特に重宝します。
こちらのUVレジンは、ガラスクロス素材が練りこまれているので強度が高いです。
1cm以内の小さい補修であればこれだけで十分な強度を得ることができます。
クリアフィルムを使用してリペアする場合
UVレジンを傷口に埋め込んだ後、クリアフィルムを貼り付けて表面を綺麗に仕上げる方法もあります。
その補修箇所でも使えるの?
破損箇所が複雑な場合は難しいですが、デッキ部などの補修には非常に有効な方法です。
通常のレジンでサーフボードのリペアを行う際の注意点
通常のレジンでサーフボードの補修に挑戦する方は、硬化剤をしっかりと混ぜこむことが重要です。
誤った硬化剤の量を使用するとうまく固まらなかったり、多すぎるとレジンの色が変色してしまう可能性があります。
きちんと計量を行い、しっかり混ぜることが大事です。
ガラスクロスを使用すればサーフボードリペア後の強度が上がる
補修の範囲や傷の深さにもよりますが、ガラスクロスは、リペアに必要な重要な素材の1つです。
ガラスクロスをリペアに使用すれば、補修後に高い強度を得ることができます。
どんなときに使用すればいいの?
広範囲のリペアを行う場合は、ガラスクロスを用意しましょう。レジンのみで補修しようとすると、強度が低くなってしまいます。
どうしてもガラスクロスが用意できない場合は、グラスファイバー入りの補修用レジンを使用することをお勧めします。
そもそもガラスクロスって何?
ガラスクロス とはサーフボードの作成の際にも使われる素材で、その名の通りガラス繊維で作られた布のことです。
レジン(サーフボードの殻のようなもの)は硬化すると非常に強い硬さがありますが、欠けやすい性質も持ち合わせています。その性質を補うために使用されるのが、ガラスクロスです。
どうしてガラスクロスは強いの?
ガラスクロスは、縦方向と横方向に繊維が交差しており、どの方向に対しても高いひっぱり強度を得ることができます。
ガラスクロスは重さで分類されており、一般的に使用されるものは4oz(4オンス)から6oz(6オンス)になります。
8ozのものもあり、サーフボード自体に重さを加えたい場合に使用されることがあります。
どの重さのガラスクロスがオススメ?
今回の修理で使用したのは、6ozのものです。
頑丈に仕上げたい場合は、ガラスクロスを二枚重ねにする方法もあります。
補修箇所にもよりますが、重ねすぎると補修面がデコボコになってしまうことがあるので気をつけましょう。通常の修理であれば、4ozか6ozのもので十分です。
【関連記事】サーフボードの素材とレジンについて【サーフボード自作】
UVライトがあると補修作業が捗る
UVレジンを硬化させる為には『紫外線』が必要です。UVライトがあれば、太陽が出ていなくてもレジンを硬化させることができます。
どんなときに役に立つ?
『UVライト』は、夜間にリペア作業を行いたい方に非常にお勧めのアイテムです。
備考)UVレジンは、日光を当てれば10分ほどで完全に硬化します。昼間に補修作業を行う場合は、太陽の光だけで十分です。
リペアした箇所を目立たないようにしたい場合はレジンに着色しよう
手芸店やネイルショップに行けば、レジン着色用のカラー顔料を購入できます。
サーフボード専用じゃなくてもいいの?
サーフボードリペア用のものではありませんが、問題なく使用できます。少量を購入できるのでオススメです。
顔料(カラー)によっては紫外線を透過しにくいものがあるため、リペア後の硬化時間に差が生じてきます。
特に濃色系のカラーをレジンに着色した場合は、硬化時間を長めに取ったほうがいいでしょう。
透過しにくい顔料を使用した場合、重ね塗りが必要になる場合があります。レジン着色後に少量を紫外線に当ててみて、きちんと硬化することを確認しましょう。
レジンの着色に関してはこちらの記事が参考になるのでオススメです。
【レジン着色】簡単に綺麗な色が出せる方法と使い方も紹介
リペア後のサーフボードの重さについて
リペアを行うと、サーフボードの重量に変化があります。
傷がフォームブランクス内部まで到達している場合、レジンだけを使用して破損個所を埋めようとすると重さが増します。
大きな破損の場合は、浮力のあるフォームを傷口にはめ込んであげることで重量の増加を防ぐことができます。
【関連記事】サーフボードの重さについて
サーフボードリペアの手順
ここから『サーフボードのリペア』の手順に入ります。今回補修するのは、知人から譲り受けた古いサーフボードです。
1970年代に製造されたもので、頂いたときからリペアの跡があちこちにありました。
UVレジンと仕上げ用のレジン、ガラスクロスを使用しリペアを行なっています。
リペアに入る前に破損状態を確認する
まず最初に行うのは破損箇所の確認です。
今回補修するサーフボードは、フォームブランクスがむき出しになっている状態です(写真参照)。このままでは、サーフィンにいけません。
リペア箇所の状況が悪化する前に、補修作業を行います。
破損箇所を整える
レジンとガラスクロスが浮き上がってきてしまっている為、余計な部分を切り落とす作業を行います。
サンダーで、サーフボードの破損箇所全体を整えます。
サンダーをお持ちでない方は、紙やすりでも大丈夫です。リペアする箇所の表面がツルツルだと、時間の経過とともにレジンが取れてきてしまいます。
表面をヤスリで削ることで細かなデコボコでき、レジンが補修箇所にしっかりと食いついてくれます。
ラジオペンチを使って、剥離していたガラスクロスとレジンを取り除きます。
余計な部分まで剥がしすぎないように慎重に行います。
剥離していない部分を剥がそうとすると、フォームブランクスの一部まで根こそぎ取れてしまうので気をつけてください。
剥離していた部分が取り除かれました。
この状態からもう一度、やすりがけします。
表面を整える作業は、サーフボードのリペア工程の中で最も重要です。この作業をおろそかにしてしまうと、後から剥がれてきてしまう恐れがあるからです。
フォームブランクスがボロボロになっている部分も取り除いてしまいます。
腐食してしまっているフォームブランクスをやすりがけします。サンダーを使うと早いですが、紙やすりでも作業可能です。
リペアした箇所の表面がきれいになるまで慎重に削って行きます。
マスキングテープを使用してリペアする箇所をマークする
余分な場所にレジンが付着するのを防ぐために、マスキングテープで補修箇所を囲みます。
補修箇所の傷口が深いので、ダムのような形でテープを配置しました。
ここにレジンを流し込み硬化させます(写真参照)。
レジンを流し込む前に、補修箇所に大きなゴミやフォームのくずが付着していないか確認してください。
ゴミやフォームブランクスのクズがついていると、補修後に剥がれてきてしまう恐れがあります。
レジンを補修箇所に流し込む
ゴミがついていないことを確認したら、いよいよUVレジンを補修箇所に流し込んで行きます。
UVレジンであれば日光を当てるまで硬化しないので、時間をかけて慎重に作業できます。
下の写真がUVレジンを流し込んだ状態です。
赤いサーフボードに対して、着色されていない透明なレジンを使っています。リペアした箇所を目立たせたくない場合は、同色になるようにレジンに色をつける必要があります。
流し込んだレジンをゴムベラを利用して整えます。
ゴムベラがない場合は、固めの紙を代用として使いましょう(写真参照)。
この段階ではまだ、リペアの表面を完璧に仕上げる必要はありません。
UVレジンを硬化させるためにリペア箇所に紫外線を照らす
UVレジンを使用している場合は、硬化させるために紫外線に当てる必要があります。
UVレジンの硬化時間の目安は10分ほどです。今回の補修箇所の傷は深かったのですが、日差しが強かったため五分後には固まっていました。
カラー顔料を使用してレジンに着色した場合は、紫外線の透過率が低くなるため硬化時間を長めにとる必要があります。
硬化が始まり、UVレジンがグミのような固さになったらマスキングテープを剥がしてください。
完全に硬化してからマスキングテープを剥がすと、レジンまで一緒に取れてきてしまうことがあるからです。
ガラスクロスをリペア箇所に設置する
リペア箇所の強度を上げるためにガラスクロスを貼ります。
特に、補修箇所がサーフボードのレールやテールの場合はガラスクロスを使用することをお勧めします。
傷が非常に小さい場合は、このまま仕上げを行っても問題ありません。
マスキングテープを利用して、ガラスクロスを仮付けします。
ガラスクロスにレジンを塗布する
ガラスクロスの仮付けができたら、レジンを塗り込んでいきます。
備考)今回仕上げに使用したのは、『Solarez』というUVレジンです。
『Solorez』は使いやすく、練り込まれているガラスファイバーも非常に細かいため、仕上げ作業に適しています。
補修に使用したUVレジンは、目で見えるほどの荒目のガラスファイバーが練りこまれているため、仕上げ面に違いが出てきます。
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ガラスクロスを折り込んだ際にしわくちゃになるのを防ぐために、ハサミで切り込みを入れてください。
切り込みが入ったら、いよいよガラスクロスにUVレジンを染み込ませていきます。気泡がガラスクロスの網目に入らないように十分気をつけてください。
UVレジンがしっかりとしみ込んだら、下の写真のような状態になります。白かったガラスクロスが透明になりリペア箇所が透けて見えます。
ガラスクロスを貼り付ける
レジンがしっかりとガラスクロスに染み込んだら、サーフボード裏側に向けて貼り付けていきます。
レジンがしっかりとしみこんでいないと、うまく張り付いていきません。ガラスクロスに対してはレジンを多めに使いましょう。
ゴムベラでガラスクロスを折り込んでいきます。コムベラがない場合は、厚紙等で代用しましょう。
貼り付け作業が完了し、ガラスクロスがほぼ見えなくなりました。リペア箇所にしっかりと張り付いていることを確認してから、最後の硬化作業に入りましょう。
ガラスクロスのレジンを硬化させる
いよいよ最終段階です。リペア部分に日光(紫外線)を当てて再度硬化させます。
透明なレジンを使用したので、補修箇所が非常に目立ってしまっています(写真参照)。サーフボードの色が赤いのも補修箇所が目立つ理由の1つです。
サーフボード裏側まで、ガラスクロスで保護されているのがわかります。
最終仕上げ
いよいよ最終仕上げです。余計なレジンやガラスクロスをヤスリやサンダーで削ります。
ここで注意しなければならないのは、削り過ぎないようにすることです。
硬化したガラスクロスを削り取ってしまっては元も子もありません。慎重に作業を行い、手作業で仕上げましょう。
仕上げは、耐水サンドペーパーを使用して表面を磨き上げます。僕が最後の仕上げに使った耐水サンドペーパーは600番です。
レジンに着色をしなかったため見た目の完成度は低いですが、これでサーフィンに行くことができます。
まとめ
小さいサーフボードの破損に気がついていても、目の前にいい波があったらついついサーフィンに行ってしまうものです。
リペアをせずに、破損した状態のサーフボードに乗り続けてしまうと後々に取り返しのつかないことになってしまいます。
どんなに小さな破損でも、できるだけ早急に直しましょう。
今回修理した1970年代のサーフボードは、友人の父親から譲り受けたものです。そんな古いサーフボードに今もこうして僕が乗れているのは、友人の父がリペアを怠らなかったからです。
これからも長い間使っていけるように、大事にしていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。