今回の記事では、ショートボードとロングボードのそれぞれの特徴と『難しさ』を徹底的に比較します。
結論から言えばどちらをとっても難しいのですが、それぞれに『違った難しさ』が存在しています。
ショートボードしか経験がないサーファーの中には、『ロングボードは簡単』という固定概念を持っている人がいます。
やってみればわかりますが、 ロングボードの方が難易度が高い点もたくさんあります。
その逆も、然りです。
それぞれの難しさを理解して、なにかの役にたつの?
ショートボードとロングボードの特徴をしっかりと理解すれば、自分に適したサーフボードを選ぶことができます。
それではここから、ロングボードとショートボードそれぞれの『難しさ』について考えていきたいと思います。
ロングボードがショートボードと比べて難しい点
まず最初に、ロングボードがショートボードよりも難しい点を挙げていきます。
ほれた波でのテイクオフが難しい
波が掘れてくると、ロングボードでのテイクオフの難易度があがります。
板を斜めにしたり、重心を上手にコントロールする技術がなければ、テイクオフ中にロングボード先端がすぐに水中に刺さってしまいます。
ショートボードだとどうなの?
掘れた波でのテイクオフが比較して簡単なのは、ショートボードです。ロッカーがあるショートボードであれば、さらにノーズが刺さる心配がなくなります。
※波が掘れるとは 波の斜面に角度があり、先端部が巻いている状態のこと
板を加速させる動作が難しい
速い波になってくると、ショートボードでのサーフィンの方がロングと比較して簡単だと言えます。
アップスンの動作(板を加速させる動きのこと)が素早くできるショートボードであれば、ロングボードが捕まってしまうセクションも、すり抜けることができます。
どうして、ショートボードの方が有利なの?
掘れた波に対してもレールが入れやすいショートボードは、『速い波』で有利なサーフィンが可能になのです。
力のある速い波でレールを入れるのが難しい
速い波では、ロングボードはハイラインを維持してスピードを出す必要があります。
ただし、レールの形状がソフトレール(ロングボードで採用されることが多いレール形状)の場合、ハイラインでレールを入れ続けるのは難易度が高いことです。
どうしてそうなるの?
掘れた速い波であるほど、面が張ってきます。レールの面積が必然的に多いロングボードは、『波の力に対して跳ね返りやすい』のです。
ロングボードを扱っているサーファーに技術がないと、ずりずりとボトム方向に押しだされ、波に捕まってしまうことでしょう。
サイズのある波でのサーフィンが難しい
ロングボードの難しさは、サイズが上がって速い波であればあるほど顕著になります。
ただし、サイズがある波であっても、ロングボードでサーフィンはできます。
この目で見ないと信用できない・・・
こちらの記事内の動画で、掘れた力のある波でのロングボードサーフィンを見ることができます。
【参考になる記事】Longboard crew takes over the surf Ranch
この動画から何を学べる?
この記事内の動画からもわかるように、掘れたサイズのある波に対してはテールに向けて絞った形状の、ピンテールのロングボードを使用しているのがわかります。
また、ロッカー(サーフボードの反り具合)が通常のロングよりもあるのも、動画内から見て取れます。
このように、『乗る波に適した板』を選ぶことができれば、ロングボードでも様々な波でサーフィンが可能なのです。
ターンがショートボードと比較して難しい
ロングボードのターンは、『独自の技術』が必要になります。
どうして?
ショートボードのようにターンをしても、体だけが先行してしまうからです。『サーフボードが動き出すのを待つこと』も、ロングボードに必要な技術だと言えます。
バレル内でのボードコントロールが難しい
ロングボードでバレル(チューブ)を抜けるのは、非常に高い技術が要求されることです。
特にテールの幅があるロングボードは、チューブ内でのコントロールに適した形状ではありません。
なにか方法はないの?
ただし、ロングボードでもレールを薄くしたりテールの形状を工夫することで、チューブを抜けることができます。
こちらの動画ではロングボードでもバレルに入り、きっちりメイクしているのがわかります。
動画内で使用されているロングボードのテール形状は、ラウンドピンテールです(2:20秒あたりで写り込んでいます)。
波のサイズがある際のパドルアウトが難しい
ダックダイブが難しいロングボードは、波のサイズのある日のパドルアウトがきつくなります。
特にどんなサーフスポットでそうなる?
それが特に顕著になるのが、ビーチブレイクです。
波のサイズが大きい時のビーチブレイクでは、高い技術と絶対的な体力がなければ、アウトに出るのは困難でしょう。
ショートボードがロングボードと比べて難しい点
うねりからのテイクオフが難しい
ショートボードで難しいのが、『うねりからのテイクオフ』です。
ロングボードでサーフィンができていても、ショートボードではテイクオフすらままならない波の種類は多いです。
簡単に説明すると?
ある一定の波の角度がつくまでは、ショートボードでのテイクオフは難易度が上がります。
備考)ノーズ側に浮力があるサーフボードであれば、通常よりも『うねりで粘れる』ため、テイクオフができる確率はあがります。
※うねりとは=波に角度がつく前の状態のこと
小波でのテイクオフが難しい
ショートボードでは、『小波でのテイクオフの難易度』が高くなります。
力のない波では、『浮力が少ないショートボード』に十分な揚力を発生させることができません。
どうやったら解決できる?
そうなると絶対に必要なのが、『ショートボーダーの技術』です。
小波でのテイクオフに必要なのは、『正しいポジショニング』です。それと同時に、『行きたい場所に素早く移動できるパドル力』も必要になってきます。
適切なポジショニングと十分なパドル力がなければ、特に難しいのがショートボードでのテイクオフなのです。
小波でスピードを維持するのが難しい
ショートボードで、小波でスピードを維持するには『高い技術』が必要です。
スピードを出せないとどうなる?
小波で運良くテイクオフできたとしても、サーファーに技術がなければすぐに失速してしまい、ワイプアウトすることになります。
その反面、波のサイズが上がるにつれて、『ショートボードは水を得た魚』のように躍動します。
まとめ
ショートボードとロングボードには、それぞれの『難しい部分』と『簡単な部分』が存在しています。
そもそも、『簡単そうに見えること』も極めようとすれば、必然的に難しくなります。
例えを挙げるとすれば、『テイクオフした瞬間の足の位置』です。ロングボードでは小波でのテイクオフは簡単ですが、厳密に言えばとても難しいのです。
ノーズに行くまでの歩幅を考えたりすればするほど、『どの場所に立つようにテイクオフするか』が重要になってきます。
ショートボードでも同じです。掘れた波でのテイクオフはロングボードと比較すると簡単ですが、難しいことに変わりはありません。
なにかを極めることは、『簡単なものほど難しくなる』とも言えるのです。
例を挙げるとすれば、『道端に落ちているゴミを拾う動き』です。無意識で行える動作であればあるほど、『所作』がないがしろにされます。
ゴミを拾うことはできますが、『美しく拾うこと』を極めようとすると、そう簡単ではありません。
それを実現するためには、『美しく拾う』という強い意思が必要不可欠なのです。
その点は、サーフィンでも同じことが言えるのではないでしょうか?
- 『当たり前にできる動作』を『しっかりと意識して美しく行う』こと
それは簡単なようで、とても難しいことなのです。