今回の記事では、波とサーフィンを『科学』します。
サーフィンで自由に動き回る、そして早い上達のためには、『波の原理を科学的(物理的)に理解すること』がとても大切です。
難しそう・・・
難しいように聞こえてしまうかもしれませんが、実際にはとても簡単な原理で構成されています。
サーフィンには、大きく分けて3つの原理が働いています。
- 波の力(波がトップへと向かっていく力)
- 波の力の反作用
- サーファーにかかる重力
それがサーフィン上達の役に立つの??
サーフィンの原理がわかれば、『自分のやりたいことをできなかった理由』がわかるようになります。
今回の記事では、
- どのようにサーフボードを動かすのか
- 上級者はどのように波の力を利用するのか
- レールを入れるとどういう力が働くのか
- ボトムに降りるときどういう力が働くのか
- スプレーを飛ばすにはどうしたらいいのか
- トップに行くにはどのようにレールを入れたらいいのか(どのように傾けるのか)
以上を、徹底的に解説していきます。
波はそもそもどのように動くのか【波に乗れる原理】
まず最初に波の動きについて解説していきます。
波を横から見たとき、水の流れは下のようになります。
リバーサーフィンを見たらわかりますが、サーフィンは水の流れに逆らう方向へと向かうのが基本なのがわかるはずです(沖でのサーフィンのみ)。
スープで練習したときはそうは思わなかったけど・・・
ホワイトウォーターでの練習は、上のイラストのような波の動きとは根本的に違います。
どんなふうに違う?
岸に向かって水流が発生している状態で、簡単に言えば波に押されているだけです。詳しく知りたい方は、過去記事で詳しく書いているので是非ご覧ください。
【ホワイトウォーターでの練習についての記事はこちらになります】
サーフィンの動作全てに共通すること【サーファーが自由に波に乗るためにすること】
- テイクオフをするとき
- トップターンをするとき
- カットバックをするとき
- ボトムに降りるとき
- 横に速く走りたいとき
これらの動作を助けてくれるのは、前項で説明した『波自体の動き』と『重力』になります。
じゃあ自分は何をすればいいの?
サーファーは、その波の動きを最大限に生かすために、サーフボードを傾ける必要があります。
サーフィン上達において重要なことはたくさんありますが、『サーフボードの傾け方』を学ぶことは、最も大切な基本とも言えるのです。
傾ける?
サーフボードを傾ける状態を、『レールを入れる』と言います。波の上でサーフボードを傾けるということは、サーフボードの側面(レール)を水中に入れるということなのです。
どうやってターンをするか知りたいのだけど・・・
サーフィンは基本的に、『サーフボードのどちらかの側面が水中に入っている状態』を作り出すことで、ターンをしたりアップスンを行います。
それを踏まえて自由に動き回るために、以下の3点に着目します。
- テイクオフの際にサーフボードはどのような状態になっているのか
- 波のトップに向かう水流に対してどのようにサーフボードを傾ければいいのか
- 波のトップからボトムに降りるときは重力をどのように利用するのか
- 横に早く走りたいときはどのように波の力を利用すればいいのか
次の項から詳しく説明していきます。
テイクオフでボトムに降りる方法【重力を利用する瞬間】
テイクオフしてボトムに降りる時は重力を利用して、波が作り出した斜面を降りていきます(この瞬間は完全に水の流れに逆らって進んでいる)。
もしも重力がなければ、逆流する水の流れに逆らうことは不可能です。
詳しく説明して
波の斜面を降りる時は、サーファーには重力と、サーフボードのボトム面には『ハイドロプレーニング現象』が発生しています。
ハイドロプレーニング現象と聞くと、自動車教習所の記憶しかないかもしれませんが、同じ現象はサーフボードにも起きているのです。
それってどんな現象?
簡単に言えば、サーフボードは波の斜面を滑っているということです。滑っている状態になっているということは、『揚力が十分に発生している』ということになります。
フィンレスサーフィンを見れば、滑っているという表現がぴったりなので、イメージしやすいかもしれません。
滑ってるのにどうしてコントロールできるの?
フィンレスサーフィンや自動車のタイヤと違い、サーフボードにはフィンがついているため、コントロールすることが可能です。
プレーニング現象がなんの役割を果たす?
ハイドロプレーニング現象は、スピードをつけるのに必要不可欠なものになります(アップスンのときにレールを抜いてサーフボードを寝かせるときに、この現象が起きている)。
パワーボードと呼ばれる競技は、まさにこのプレーニング現象を利用したものです。船底は平らで、水面を滑っているのが動画からわかるはずです。
スピードがつき水面を滑っている、この現象こそが、サーフボードで起きていることになります(サーフボードの推進力は波の力と重力によって生じる)。
アップスンでスピードがつく理由【ハイドロプレーニング現象を利用する】
先述したハイドロプレーニング現象を活用するのが、『アップスン』です。
トップに上がりレールを抜くことで、『サーフボードの滑走面』に『ハイドロプレーニング現象』が発生します。
ダウンザラインとも呼ばれる、ハイドロプレーニングが最大限に発生するレールを抜いた時の疾走感は、サーファーたちが愛してやまない瞬間だと思います(トップからボトムに降りるとき)。
話が少しそれますが、滑走面が大きくなればなるほど、サーフボードは良く滑る(速い)ということになります。
シモンズと呼ばれるボードは、まさに『ハイドロプレーニング現象を最大限に発生させること』を目的として開発された板です。
【シモンズについて詳しく知りたい人はこちらの外部記事がおすすめ】
シングル・ツイン・トライは、こうイメージすればよく解る(番外編 ミニシモンズ)
サーフボードはどうして前に進めるの?
一つ目は、重力が発生していること。もう一つは、波の力が推進力に変わっているからです。
レールを入れた状態に戻っても、『波の力(作用)』に対して反作用が発生して、ボトムを抜けてサーフボードの推進力へと変わります。
ボトムコンケーブ(サーフボードのボトムデザインのこと)が果たす役割の一つは、『推進力を得るため』です。
レールを入れている時も推進力は発生している?
スピードが十分につくとサーフボードに揚力が発生し、サーファーに重力がかかることにより、スピードがつきます。この状態は、先ほどの動画であったパワーボートが水面を滑っている状態と似ています。
アップスンをする最初の動作はどうやる?
アップスンで一番最初にするのは、トップに上がることです。簡単に順序を説明すると、以下のようになります。
- サーフボードを傾ける
- トップに上がる
- レールを抜く
- 重心を落としサーフボードを斜面に滑らせる
- プレーニング現象を得る
- スピードが出る
- レールを入れてトップに上がる
- 繰り返す
トップに上がるのは、波の力を最大限に受けて、サーフボードの推進力に変えるためです。
どうやってトップに上がるの?
こちらの断面図をご覧ください。
上のイラストが、ボトム近くにサーフボードがある状態です。この瞬間にレールを入れると、サーフボードがトップに上がっていきます(次のイラストがレールを入れた状態)。
トップに上がった瞬間にレールを再び抜くことで、スピードがつきます。
これが、『アップスンの原理』です。
トップに行く方法【波の力をボトム面で受けて利用する】
先ほどアップスンの説明でもあったように、トップに行くためにはサーフボードを傾けてレールを入れる必要があります。
傾けないとダメなの?
サーフボードを、波とフラットにしているだけでは、波の力を受けることができないため、ボトムに降りテイクだけになってしまいます。
アップスンのときのように、単純にトップに行きたいだけなら、サーフボードを波側へと傾けていきます。そうすることでサーフボードのボトム面で波の力を受けて、自然とトップに上がっていきます。
角度をつけてトップにいく方法
角度をつけてトップに行きたい場合、二つの方法があります。
1つは、後ろ足にやや重心を置くこと。2つ目は、ボトムにできるだけ降りて、スピードがある状態で傾け始めることです。
なぜボトムにおり切るのが大切なの?
ボトムにおり切ることが大切な理由は、いかのふたつです。
- スピードがついているから板を大きく傾けられる
- ボトムからトップまでの距離を稼ぐことができれば角度をつける余裕ができる
この2つを意識すれば、理論的には角度をつけてトップに入っていくことができます。
スプレーの飛ばし方【波の力の作用と反作用】
スプレーを飛ばしたい時に知っておくべきことは、『波の力とその反作用』についてです。
筋力も体重も大人より少ないはずのキッズサーファーが、大きなスプレーを飛ばしたり、華麗なターンができるのを、一度は見たことがあるはずです。
それは、波の力を自分たちより上手く利用できているからにすぎません。
力まかせでやるのは意味がない?
サーフィンはダンベル上げではなく、相手(波)の力を利用する『波合気道』です。
物理的に説明すると、『ニュートンの運動の法則』が当てはまります。波の力を『作用』だとすると、スプレーはまさに『反作用』だと言えるのです。
そう考えると、スプレーをたくさんあげたいのであれば、波の力が最も強くなっているところでサーフボードを返す必要があるのがわかります。
具体的にどこで?
サーフボードにたくさんの力がかかるのは、波のトップ部分です。『作用』がサーフボードにたくさんかかっている状態で、板を返せば自然とスプレーが飛ぶはずです。
【ニュートンの運動の法則とは】
まとめ
今回の記事を書いたのは、自分自身のサーフィンを今一度見直すためです。
自分自身は、思ったようなターンができなかったり、変なワイプアウトをすることがまだまだあります。
そうなってしまう理由は、『波のことを考えずに自分勝手に板を動かそうとするから』です。サーフィンを今回の記事のように科学することで、新しい気づきを得ることができるようになりました。
理論で分かっていても実際にできないのがサーフィンではあるのですが、『サーフィンの原理』を理解できれば、サーフボードをどう傾けていけばいいのか、頭の中でイメージができるようになるはずです。
それがわかれば後はもう、海に通い続けるのみです。
実際にできるようになるその時まで。